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眠那影俄仁那琉

黒沢清『Chime』(2024)のヤマを張ってる。

『Chime』(2024)のヤマを張ってる。
映画のヤマを張るとはなんだろうと思われるだろうが、これをよくやってしまう。

小出しにされているあらすじを読む限り、主人公が講師をしている料理教室に統合失調症のような症状を訴える生徒がいる、というところまでしかわからない。
これが黒沢監督曰く「この世に確実に存在するであろう摩訶不思議な恐怖」を描いた作品らしい。

まず、統合失調症黒沢清が扱ってきた題材と関係のありそうなものがないか調べていたら、「シュレーバー回想録―ある神経病者の手記」(2002)に辿り着いた。
そこからシュレーバーについて調べていく内に、エリアス・カネッティ「群衆と権力」(1960)でパラノイア患者と権力者は共通する価値体系を持つとしてシュレーバー症例が取り上げられていることがわかり、気になったので「エリアス・カネッティ『群衆と権力』の軌跡―群衆論の系譜と戯曲集を手がかりに」(2020 樋口恵著)を読んでいる(原著は厳しいと判断)。
シュレーバー回想録」も「『群衆と権力』の軌跡」も絶版だったが、なんとか入手して読んでいる。読んでいるが、いったい何をやっているんだろうとも思う。

ただシュレーバーは興味深いし、カネッティの思想は読んでみると、黒沢清の映画を理解する上で必要な知識だった。
黒沢清の映画を調べていると、結構な確率でファシズムやナチズムに関わりの深い思想家の論考に行きつく。