みんな映画になる

眠那影俄仁那琉

『蛇の道』復讐するは我にあり

黒沢清蛇の道』のセルフリメイクに関する新情報が解禁されました。
主演:柴咲コウ、ダミアン・ボナール

哀川翔が演じた役が柴咲コウになっています(たぶん)。
stevenspielberg.hatenablog.com
こちらの記事で『蛇の道』について書いてますが、内容からすると、やはり新島(哀川翔)とコメットさん(砂田薫)の両義性の対比は印象的なので、そうなるとコメットさんはどうなるのか気になります。

男性の表象としてのビデオシネマの主役である哀川翔を、映画から浮いた超越的な存在として扱うことで、本来なら加害者側の性でありながら、少女を救おうとする存在として描いています。
主役ありきのビデオシネマの制約を逆手に取り、イニャリトゥの『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015年)などは顕著ですが、加害者側に加害者を見せるために被害者を加害者側に演じさせる、みたいなことになっているわけです。このことによって、被害者とこちら側という高慢なまなざしを封じ、どこまでもこちら側の物語として描いています。
この世界で少女が救われるなんてことはないのだから、新島だって終わることのない地獄のループに自ら落ちて、そこから出ることはできません。
そしてこの物語を、セカンドバック小脇に挟んで、レンタルビデオ屋でとりあえず哀川翔が出ているビデオを手に取る層に見せるのです。

そんな哀川翔の両義性を担保する存在として、「ヤクザの女」という両義性を持った存在のコメットさんは配置されていました。
最後にコメットさんを殺すのは新島で、コメットさんの白いブラウスが赤く染まって、最終的に彼女は「赤い服の女」(黒沢清映画の死んだ女の象徴)になるので、彼女を殺した新島は間違いなく加害者でもあるのです。

その哀川翔柴咲コウになったということは、コメットさんはどうなるのでしょうか。
柴咲コウに統合されるのか。「赤い服の女」として映画の中を彷徨うのか。すっかり姿を消してしまうのか。
やっぱり統合して、『バトル・ロワイヤル』(2000年)で相馬光子を演じた柴咲コウさんに杖でシャキーンとやって欲しいです。