映画を書くと頭が疲れる

観るものです。

『恐怖の報酬』(1977年)感想・ネタバレ

監督:ウィリアム・フリードキン


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暴走列車ものもそうですが、ニトロをトラック輸送となると広義の意味でアクション映画だと思うのですが、フリードキン監督はアクションが撮れないですね。『エクソシスト』(1973年)のショットが、決まってるけど静的なものが多かったので、アクションはどうなのかな、とは思っていたのですが駄目でした。


冒頭の爆破テロで派手な爆発があり、ニトロ爆発のハードルを上げるなぁ、気合い入ってるなぁと思って、その後の油田火災爆発も更に派手だったので、これどうするんだろう?と思ってたら、肝心のニトロ爆発に何の工夫もなく、当然ショボく感じられてしまいます。
こういう映画は緩急の緩の見せ方が肝だと思うのですが、フェイント的な緩がなく、取って付けたように緩が出てきて、こっちが構えたところで爆発するのでまったく驚けないです。


クルーゾー監督版と比べてどうこうじゃなく、他にも色々まずいです。

4人の男が2人ずつトラックに乗り込み、2台のトラックで油田火災現場までニトログリセリンを運ぶのですが、3人はそれぞれ別の土地で犯罪がらみのトラブルを起こして南米奥地に逃亡してきていて、そこで金が尽きて逃れられなくなり、劣悪な環境で生活をしています。ただ後の1人は、映画の冒頭に出てきてマンションだかホテルだかで男を銃殺して悠々と立ち去っただけのシンプルな描かれ方をしていて、3人が暮らす南米奥地にも遅れて現れ、金に困っている様子もなく、かなり謎の多い男です。こうなるとこの男は3人の内の誰かを殺しに来た殺し屋かと思ったら、そのような展開は一切なく、たまに拳銃をぶっ放す人、ぐらいで死んでしまいます。
他にも、出発前に4人(1人は出発直前に殺し屋みたいな男に殺される)で乗り込むトラックの整備なり改造を黙々とやるのですが、内1人は冒頭の個別描写で詐欺師セレブみたいな男として描かれていたのに、逃亡先で肉体労働に従事したとはいえ、やたら手慣れた様子でトラック整備をします。ここだけではなく、全体的に人物描写が前日譚で済んだことになっていて、逃亡後の場面に個別の行動原理みたいなものが無く、逃亡前のそれぞれのやたら派手な前日譚が大した振りになっていません。


油田火災を止めるために必要なニトログリセリンは一箱だけど保険のために六箱運ぶ、という説明台詞が出発前にあり、倒木で道が塞がれて先に進めなくなった時に、爆破テロをやった男がニトロを一箱使って倒木を爆破するのですが、それがトラック一台分の幅の空間が倒木に空く程度の爆発で、地面が抉れるようなものでは全然なく、油田火災ぶっ飛ばすぐらいのやばい爆発が来るぞ!と思っていた気持ちの持って行き場がない。
肝心のニトロ爆発がショボくて、緩急の急もぼやけています。
そもそも運搬する4人がニトロのヤバさを確認する場面がありません。放置されていたニトロを石油採掘会社の人達が確認する場面で、指先に着いたニトロを払うと地面に落ちた数滴が派手に爆発する音がして、それを観た観客はニトロのヤバさを確認するのですが、観ていない犯罪者の4人が「刺激を与えると危ないぞ」という会社の言いつけだけで神妙にトラックを運転するのが解せない。


あとは、トラックが揺れて危ない場面で荷台のニトロの箱がズレるショットを入れるのは本当に余計です。それは想像させるもので映されると興ざめします。このことと関係していると思うのですが、崖の際を走行する危ないトラックの様子だとか、見せ場の橋の場面もそうですが、大概ニトロを積んでいなくても充分見た目で危ない状況です。そしてその橋の場面が、後発のトラックが渡るバージョンとしてもう一回出てきたのを見た時、どうもフリードキン監督は、映らないニトロがどうなっているのか想像すると怖いだとか、ニトロを積んでいるせいで普通なら何でもない所がやたら怖く感じられる、などといった感覚が分からないから描けないのではないかと思ったのですが、それで何でよりによってこの映画のリメイクをしたのでしょうか。もし、この演出が観客の想像力を低く見積もったものだとしても、どちらにしても想像させる演出が出来ないことに変わりはありません。


得意の静的な決まったショットも、アクション映画でアクションが機能していない上で頻繁に観ると、やたらクドく感じられます。
時系列をバラバラにしたら『ダンケルク』(2017年)みたいに出来たかもしれませんが、だからといって映画が良くなるかというとそうではなく、誤魔化せる、かもしれないだけなのでどうしようもありません。
エクソシスト』に出てきた悪魔的で原始的な混沌を、随所で記号的に描いているのですが、アクションと繋がっていないので意味を汲みようがない。


ずっとオラついてるのが怖いと思ってるチンピラみたいな映画です。こういう映画は、緩い場面が怖いという認識が足りないと思う。
あと、ニトロを舐めてる。ニトロの運搬一番勝負なんだから化物みたいにニトロを描かないと!

ということで読んでいただいた通り、ダメ出しで盛り上がる系映画なので、誰かと一緒に観るのをオススメします。