映画を書くと頭が疲れる

観るものです。

『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(2017年)感想・ネタバレ

監督:アレックス・カーツマン

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ザクザク進む映画です。
冒頭の巨大な砂嵐に終始追われているかのようです。
この映画の後に続けて『キングコング: 髑髏島の巨神』(2017年)を観たのですが、髑髏島に着いてからの移動手段が歩きと分かった時の「歩きかぁ…」(タルいな)感ったらなかったですね。

スターの登場場面が良いですよね。
まず、トム・クルーズですが、方々で指摘されているようにインディアナジョーンズっぽいキャラクターなんですが、登場もインディっぽいです。というか、インディの登場場面って大概古典映画のスターの登場のしかたなんですよね。で、やっぱり大スターであるトム・クルーズのこういう登場場面は見たいし、実際見るとあがります。
舞台は砂漠。覆面男が画面に登場し、布で覆われた口元から、そんなハッキリ聞こえるはずのない第一声が聞こえ、必要もないのに覆面を取るとトム・クルーズ!という、本当に正しいスターの登場場面です。
私の持っていた前情報は「トム・クルーズのエジプトもの」ぐらいだったので、ラッセル・クロウの登場場面もあがりました。似たような演出の駄目パターンは、『007 スペクター』(2015年)のフランツ・オーベルハウザー(クリストフ・ヴァルツ)の登場場面です。古典映画の悪役スター登場の演出で散々引っ張って出てきて「誰だよ」ってなるやつ。あれはひどい。とても白けました。この演出でいきたいんなら役者を変えるべきだし、この役者でいきたいんなら演出を変えるべきだ、とサム・メンデス監督に言ってやれる人はいなかったのでしょうか。007シリーズにとって重要な役柄だからあの演出でいいと思ったのなら大間違いでしょう。重要な役柄の登場演出とスターの登場演出を履き違えている。なんなら『007 スペクター』からちょっとしたトラウマで、誰も突っ込まないから、あの間違った演出がアリになってたらどうしようと思っているのです。なので、若干警戒しながら観ていたら、ラッセル・クロウ!ってなった時の、こいつわかってるな感、分かっていただけますかね。こうなると、どうなるかというと、その後の映画を好意的にしか見なくなります。

姿の意図的な隠匿からの登場って、スターやモンスター以外許されません。ラストでトム・クルーズはモンスターになって、冒頭の砂漠の場面に何事もなく戻ったかのような終り方をするのですが、映画におけるスターとモンスターの同義性を強調するように登場場面に収斂させたということは、この映画におけるモンスターとは、ミイラ女ではなく、「トム・クルーズ」だということです。この映画は、それを自覚的にやっています。色々話し合った結果、モンスターとは「トム・クルーズ」である、となったんでしょう。現代映画のモンスターは、ミイラでも透明人間でも半漁人でもなく、「トム・クルーズ」なんじゃないか?と。そして、この見解には、スピルバーグトム・クルーズ主演作が影響しているのは間違いありません。

アクションのクライマックスも、ロンドンでエジプトものをやろうとしていて、街のガラスというガラスが割れて、大量のガラス粉がロンドンを砂嵐のように覆うというアイデアもいいですし、それまで振り動かされ続け、思うように動けなかったトムが、クライマックスでやっと真っ直ぐ走るというシンプルな爽快感もいいです。
無駄なくザクザク進むのに、ライトを顔に何度か当てるなどのくだらないくだりをちゃんと入れる。生気を吸い取られてミイラになる人間の口元が乾燥して毎回パカーッと開く細かい描写。ハイドの振りを、お約束感満載でジキルが回収(そして全てを出し切ったらラッセルは速やかに映画から後退する)。ミイラはミイラに戻って再び封印される(破壊されたりしない)。出てくる主要な人間は、皆死んで蘇える(最終的に、まともに生きている人間がいない)。期待通りトムを闇落ちさせ(ロンドンの地下洞窟で、闇落ちしたトムの傍らにミイラ女と溺死した女が横たわる!)、モンスターはトム・クルーズでした!と明るく終る。

見ている間中、この監督度胸あるなぁ、と思っていました。意識してるのでしょうが、演出にスピルバーグのようなふてぶてしさがあります。観終わった後に経歴を調べてみましたが、脚本書いたり、プロデューサーをやってる人みたいですね。ここらへんの度胸のよさは、プロデューサー視点からくるものなのかもしれません。
手も抜いていないし、思い切りのいい描写で冗長さもないし、モンスター映画らしいし、スターをモンスターとして描く興味深い試みも成されていて相当面白いのですが、興行が振るわなかったそうで、ユニバーサルのダーク・ユニバースの企画が事実上凍結らしいですね。
残念すぎます。