映画を書くと頭が疲れる

観るものです。

『散歩する侵略者』(2017年)の東出昌大さんについて

※以下の記事は、『クリーピー 偽りの隣人』(2016年)のネタバレを含みます。


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※ 画像は『予兆 散歩する侵略者


出オチなのでしょうか?

私はネタにマジになっているのでしょうか。

いくつかレビューを読んでみましたが、東出さんの牧師役について、反応している人は多かったのですが、印象的な、あるいはネタとしての感想が多く、結局彼が何者なのかを説明している人はいなかったように思います。そういう私の『散歩する侵略者』感想記事でも、「東出昌大さんが牧師役でドアを開けて登場するのも楽しかったです。」と、子どもがやっつけで書いた日記のような有様です。

実際、彼の登場場面は笑いを誘います。私は笑いました。

なぜなら、ドアが開かれると、牧師の格好をした長身の東出さんが、ドア枠にピッタリと納まっていて、パッと見で面白い画だったからです。

そして映画を観た後に、東出さんが、WOWOWのスピンオフドラマ『予兆 散歩する侵略者』に出演することを知ります。

こうなると、黒沢清監督作における、東出さんのフィルモグラフィーが嫌でも気になります。『クリーピー 偽りの隣人』(2016年)で刑事の野上として死んだ彼が、牧師で登場。また、この牧師として登場する場面で彼を囲むドア枠が、長身ゆえにピッタリと彼の身体を納めていて、前回の役で死んだこととも相まって、棺桶の枠に見えます。立てられた棺桶の蓋を開けて、今蘇って出てきた、みたいな。

だから、彼は幽霊の牧師に見える。

そして、「幽霊の牧師」で思い起こされるのが、クリント・イーストウッド監督『ペイルライダー』(1985年)です。この映画で、主演もしているイーストウッドは、牧師と流れ者の二つの面を持つ、幽霊のような男を演じています。

この映画は、今年の6月に精華大学で行なわれた黒沢清監督のトークイベントで一場面を見せてもらって、面白そうだったので後日見ました。記憶も新しいせいか、長身、牧師、棺桶、から直ぐに思い出しました。まるで最近知った単語を早速使う人みたいですが、他にこれらのイメージを満たす具体的なものが浮かびません。

なので、スピンオフドラマでは、彼は凄腕の流れ者役をやっているのではないでしょうか。WOWOWに加入していないので、ソフトになるまで詳細は確認できませんが、侵略者側として登場しているようです。

「『ペイルライダー』の主人公の牧師が幽霊である」ことは、黒沢清監督が以下の記事の中で言っています。

Intro CREATOR MOVIE MAGAZINE インタビュー記事「映画『ヒア アフター』公開によせて 黒沢清監督にイーストウッドのことを聞く」

http://intro.ne.jp/contents/2011/02/14_1735.html

また、『ペイルライダー』において、幽霊のような男が牧師であり流れ者でもあったことから、牧師や流れ者などは、客観的なその者の在り様であるのに対して、幽霊とは、その者の何らかの状態を指すのではないか、と思われます。これらは、牧師でもあり流れ者でもあり幽霊でもあり、といったイコールの在り様では無いのです。東出さんの、同名の異なった二作品をまたぐ役柄は、幽霊が牧師であり侵略者でもあるのです。流れ者や侵略者といった所謂ストレンジャーは、現実では抽象的な存在であるが故に、物語の中で幽霊と同様のものとして扱われがちですが、二人の監督の作品では異なるものとして扱われています。

前作で死亡する役柄を演じた長身の役者に、映画とスピンオフドラマで一人二役させ、『ペイルライダー』の牧師と流れ者の二つの面を持つ、幽霊のような男を演じたイーストウッドに見立てる。なんて、黒沢監督がものすごくやりそうですよね。というか、この後の東出さんが気になります。