映画を書くと頭が疲れる

観るものです。

くらもちふさこ『花に染む』4巻までの感想【ネタバレ】

映画の事を書くつもりでいたんだけど、それもすっかり滞り、今回は漫画です。
観たり、読んだりすると、その内容が頭から離れずグルグルしてしまう時があって、まさに今がそれなのです。
今レンタルで『ホワイトハウス・ダウン』を借りていて、早く観たい...でも頭の中は違う作品の内容がぐーるぐる。こうなるともう書いて吐き出して落ち着くしかないのです。

先にも述べたようにグルグルしているところを落ち着けたいだけで、結論を導くだとか、面白おかしく紹介するだとか、そういうのではありません。
そしてネタバレします。(最新巻まで)



花に染む』の4巻を読むまで、大きな流れは超能力サスペンス的なものかと思っていたんですが、4巻で案外ヒロイン(花乃)とヒーロー(陽大)の内面の変化について丁寧に描かれていましたので、考えを改めました。花乃のモノローグとしての過去篇かと思いきや、花乃の知り得ない場面なども出てきて、そこらへんは過去を思い出そうとする花乃をきっかけにして、過去篇が始まるという事なんだろうと理解しています。
4巻では、内面の変化を表すために2人のハグが度々用いられていました。3回も出てきますよ。
過去篇も基本的な主体は花乃なので、モノローグは花乃なのですが、この4巻の3回のハグで見えるのは陽大の内面の変化です。

1回目のハグは馬に花乃と2人乗りをして後ろから陽大が花乃にハグをします。この時の陽大は、まるで十牛図の騎牛帰家のように満たされていました。この時の陽大にとって、自分だけのものと言えるものは、花乃と馬(いつもの馬ではない)だけのような気がします。神社の跡継ぎとして期待されている陽向と違い、次男坊である陽大は自分だけのものを殆ど持っていません。この時のハグは、そんな陽大のものだけでつながった完璧な世界のようでした。しかし陽大は、自分が満たされている事に気づかず、花乃を置いて陽向と雛に言われるまま家に帰ろうとしています。幸せな時って、そういうもんですよね。

2回目のハグがある前に、マネージャー志望の女子と陽大が放課後の教室で2人きりのところを、もやしとたのじと花乃が覗きます。この場面は何のために必要だったのでしょうか。ここで囁かれるもやしとたのじと花乃の会話は、陽大をからかうのなら、何でもよさそうなのですが、陽大のスキンシップについてでした。そして花乃はその話題が出た時に1回目のハグを思い出します。花乃は、その場のノリのようなもので他愛無いでは済まされない、というような事を言い、陽大に「小声でやれよ」と遮られてしまいます。この場面とセットで考えたい場面として、少し遡り、雨の日の陽大と雛のキスの場面をあげておきます。
なぜこの場面かというと、それまでスキンシップに違和感を感じていなかったであろう陽大が違和感を感じるきっかけとなった場面だからです。今までの陽大にとって、親愛や信頼などの表現として他愛なく行っていたスキンシップというものが、この時の雛のキスによって変容してしまいます。平たく言えば、男も女もなかった陽大の中で女を意識するきっかけとなった場面です。
そして、上記の放課後の場面です。もうスキンシップがどういう意味を持ってくるのかを悟っているが故に、3人の会話を陽大は思わず遮ってしまいます。

2回目のハグは、弓道の試合で思うような結果が残せず、悔しい思いをしていたところに、女子チームから試合の要請が入り、そこで陽向、陽大とチームを組み、結果を出せたことに感激した花乃が思わず陽大に抱きついてしまうというものでした。
この2回目のハグから、陽大の表情は読み取れないように描かれていきます。このことから、陽大が花乃を女性として意識するようになったのは、この場面からなのではないか、と思ってます。ココハナ(掲載雑誌)の売り文句によると、この漫画は和弓純愛ストーリーとのことなので、陽大が誰を想っているのかって所は大事なわけです。この時の陽大はまだポーカーフェイスは出来ませんし、見せられない(見せるとバレる)と考えるのが自然かなと思います。
ここで、花乃に抱きつかれたものの、両手が弓道の道具類で塞がる陽大から弓をそっと取ってあげる陽向は、多分陽大が本人で自覚するより前に陽大の花乃への気持ちに気づいています。陽向は雛に恋をしていますので、そこら辺の感覚は無自覚な弟よりあったのだと思います。部活のトレーニング中に田路に自分の足を持たせようとする花乃と、それを見つめる弟に気づいて花乃を呼びつけて、田路から花乃を引き離す場面もありました。印象づけるように、田路の手が花乃に触れそうなところで切り取ったコマが描かれています。そのコマの描かれ方のアングルを見る限りでは、多分あれは陽大の目線を描いたコマだと思います。
そういう弟の何気ない様子に気づいていたからこそ、陽向は2回目のハグの時、きっと陽大は花乃を抱きしめたいと思っているはずだと思い、弓を手から取ってあげたんでしょう。陽向は人の事をよく見て、相手の望む事をやることが出来る人だというのは、花乃の離れの場面でも分かります。ただ雛に対しては、思い人なので冷静ではいられないようですが。
2回目のハグは、話しの流れからして、一方的に花乃が陽大に抱きついて終わったとしてもそれはそれで微笑ましく、放課後の会話の振りを回収する場面として充分機能したと思われます。寧ろ花乃の意外な一面を見せるためなら、両手の塞がった陽大に抱きついた。で終わった方が絵的な面白みは増すような気がするのですが、この2回目のハグに、それ以上の意味が込められていると思うのは、やはり陽大の表情が見えないことと、陽向が弓を取ってあげることが起因しています。

3回目のハグは、夏の弓道部合宿の暑さ我慢大会の流れで起こります。雛からもたらされた優勝賞品をかけた我慢くらべ、雛を思う陽向は、雛のものを手に入れたいと頑張りますが、寝てしまいます。無意識の内に暑さで服を脱ごうとする陽向。その様子を、ウトウトしていた花乃に陽大が告げます。陽大から花乃に言って気づかせる、てのがミソですね。
花乃が気づいた所で陽向の服を直す陽大。ゲームをつまらなくするな、という花乃の言葉に、反発して強硬手段に打って出ます。自分は、雛のものが欲しいんじゃない。雛のものは陽向が手に入れるべきだ。雛のものを僕が手に入れてもいいの?とか、こんなところでしょうか。花乃の恋愛に対する無頓着さ加減に、揺さぶりをかけたくなって、じゃれている風を装って陽大は無理やり花乃をハグします。
その様子にドギマギしてしまうたのじ。放課後の教室から、共通認識として、スキンシップには恋愛的な意味合いが込められたのだから無理もありません。花乃以外。
今までは何の気なしに触れていた花乃に、恋愛感情を持って陽大が触れた初めての瞬間です。意識してるので手が震えています。
花乃も陽大の変化には気づくものの、何かおかしいと思うのみで、恋愛的なところに考えが及びません。
花乃が恋愛に疎い、陽大を意識していない、というよりは、花乃には強力なまじないがかけられている為だと思っています。そこは、追って後述します。

長くなりましたので、一旦切ります。次に続きを書きます。
大分スッキリしてきました。